学生時代は高飛び込みに打ち込み、国体に出場した経験があります。競技の世界では、結果を出すために日々自分と向き合い、限界を超えていく姿勢が求められます。その経験は、今の自分の価値観や、事業に向き合う姿勢の土台になっていると思います。
その後はエンジニアを目指し、情報工学を学びました。もともと、テクノロジーや仕組みづくりに興味があり、将来的には社会の課題を解決できるような仕事がしたいと考えていました。単に知識を学ぶだけではなく、どうすれば既存の仕組みをより良くできるのか、どうすれば新しい価値を生み出せるのかを常に意識していました。
一方で、私の身近には福祉の環境があり、障がいのあるお子さまを持つ親御さんと接する機会も少なくありませんでした。そこで何度も耳にしたのが、「自分がいなくなった後、この子の将来が本当に不安だ」という切実な声です。その言葉はとても重く、ずっと心に残っていました。自分の知識や経験を使うなら、こうした本当に必要とされている課題に向き合いたい。そう思うようになったことが、今の事業につながる原点になっています。
MATATABIを設立したきっかけは、障がいのあるお子さまを持つ親御さんたちの不安の声に、少しでも応えたいと思ったことです。将来への不安、地域の中で安心して暮らし続けられる環境の不足、必要な支援が十分に届いていない現実。そういった福祉の課題を身近に感じる中で、自分にできる形で社会に貢献したいと考えるようになりました。
そこで立ち上げたのが株式会社MATATABIです。私たちは、従来の福祉のあり方をそのまま踏襲するのではなく、DXを取り入れることで、今までになかった福祉の仕組みづくりに取り組んできました。福祉の現場はどうしてもアナログな運営が多く残りやすい領域ですが、そこにテクノロジーを掛け合わせることで、業務の効率化や透明性の向上、働く人にとっての環境改善を進めてきました。
福祉は「良いことをする」だけでは続きません。継続可能であること、働く人にとっても魅力ある環境であること、利用する方にとっても安心できる仕組みであること、そのすべてが必要です。MATATABIでは、現場と経営の両方を見ながら、新しい福祉の形を実現することを目指してきました。
MATATABIを通じて福祉の現場に向き合う中で、私は新たな課題にも気づくようになりました。それは、高齢者や障がいのある方々の雇用機会が年々減少していること、そして賃金水準も厳しくなっていることです。さらに、AI技術や工業技術の発達によって、これまで仕事として成り立っていた軽作業の機会も少しずつ失われつつあります。
その一方で、日本の伝統工芸や地域産業に目を向けると、こちらもまた担い手不足や市場縮小という深刻な課題を抱えていました。本来、世界に誇れる価値を持っているにもかかわらず、伝え方や届け方、事業としての設計が十分でないことで、その魅力が活かしきれていない。私はこの二つの問題を見たとき、まったく別のものではなく、どちらも「人が活躍できる場」や「社会に必要な価値」が失われつつあるという共通の課題だと感じました。
だからこそ、福祉と伝統産業の両方を支える仕組みをつくりたいと思うようになりました。日本の食品や製品、伝統工芸を現代に合った形で再編集し、その価値を国内外に届けていく。そしてその価値創造のプロセスの中で、多様な人々が関わり、技術や経験を活かしながら働ける環境を生み出していく。HANAYOIは、そうした発想から生まれた取り組みです。
私たちが目指しているのは、伝統の継承と社会的責任を両立させることです。ただ文化を守るだけでもなく、ただ雇用を生むだけでもない。その両方を事業として成立させ、持続可能な形で未来につないでいくことに大きな意味があると考えています。
HANAYOIが目指しているのは、日本の本質を世界の日常へ届けることです。日本の伝統や文化を、ただ守るだけでなく、現代の暮らしや世界の感性に合う形で再構築し、未来へつないでいく。その過程で、職人や地域、多様な人々が持続的に活躍できる仕組みまで含めてデザインしていくことが、私たちのビジョンです。